狂人日記

ある男の人生記録です

資本主義を発展させたのは性欲である

精神分析の父と呼ばれているのはフロイトである。フロイトはその天才的才能で奇特的ともいうべき凄まじい理論を展開したわけであるが、フロイトフロイトの元に訪れる患者を調べてみると患者の多くが性的葛藤を抱えていた。フロイトはそこで神経症になる原因は性的葛藤にあるのではないかと考えた。フロイトの弟子のアドラーユングはそのフロイトの考えに賛同できず、フロイトの元を離れてしまった。(フロイト派の岸田秀アドラーユングを馬鹿呼ばわりしてた)アドラー神経症の原因は劣等感補償にあるとし、ユングは専門が分裂病であり、フロイトにとって無意識とは抑圧された意識でありどちらかと言えばネガティブなものと捉えられてたがユングフロイトと違って無意識には無限の可能性があり、明るい側面もあり、病気になり、それを克服するのは自己実現の過程であると考え、太古の昔より無意識的に受け継がれた元型があると考えた。

フロイトのことを考えると時代性は無視出来ない。フロイトの時代は性的に抑圧の強い時代であった。それで、性欲を満たせないから苦しい思いをしてたのだが、例えば王室では表では性的に厳格な態度をとりながら裏では欺瞞的性を謳歌していた。しかし、一般市民は性欲を発散出来ずに苦しんでいた。これが神経症になる原因であった。だから、フロイトの元を訪れる人間は皆性的に葛藤を抱えていたのである。そこでフロイト神経症になる原因は性的葛藤にあると考えたのだが、しかし、これはちょっとおかしい。フロイトの理論によると社会性や時代性が生み出す観念とエス(無意識)との合作により病気が生まれるのだから、フロイトの時代は性的抑圧の強い時代なのだから、フロイト神経症には時代性があると考えてもよさそうだがフロイト神経症になるのに性的葛藤があるのには普遍性があると考えていたようである。あの天才的なフロイトがそう考えていたのは実に不思議である。

フロイトはその神経症の因って来る由来を分析してその分析内容を患者に告げると病気はびっくりするくらい治ったのであった。フロイトは言う「そうです。自分の欲望に忠実になればいいのです」「勇気を持って無意識的葛藤を直視すればいいのです」と。すると患者はカタルシスを得て病気が治ったのだ。

フロイト派の岸田秀フロイトの理論を拠り所に資本主義を分析する。ウェーバーの説によるとプロテスタントの貯蓄の精神が資本主義を産み出したとのことだが、岸田はそれだけでは足りないと分析する。資本主義が発展する為には性欲も必要だと言うのだ。男が女を得る為に性欲を刺激させる様々な観念を普及させて、男は女の虜になり、女を得る為に労働に勤しみ資本主義が発展したと言うのだ。これは卓見と言わねばなるまい。少なくとも私には当てはまる。私は女が欲しいからファッションに気を遣うが洋服を買うために労働に追従する他にない。もろに資本主義の罠にはまってると言えるだろう。それで最終目標は好きな女とセックスすることだが、その最終目標に到達する為にはどうしても色々と金がかかってしまう。ファッションや食事や映画、或いは買い物に付き合い洋服や小物等をプレゼントしたり、食事を奢ったりすることもあるだろう。とにかく女をモノにするためには金がかかる。そういう努力を重ねて女に魅力的な男と思わせて、最終目標であるセックスの為に男は労働に勤しみ金を稼ぎそうしてやっと女を得ることが出来るのだ。資本主義とはそういう世界で男に労働をさせるように社会が仕向けてると言うのである。

岸田はプラトニックラブの幻想と性欲を満たす為だけの性幻想とを分けて説明してるが長くなるし、ややこしくなるので簡単に説明する。プラトニックラブの幻想は間違いなく聖母マリアの処女幻想からきてるがこのプラトニックラブの幻想と性欲を満たす為だけの性幻想が分離したと言うのだ。性と愛が一致せず分離したのだ。愛あるセックスも幻想に過ぎないが(愛自体が幻想に過ぎないが)これは私には実によく分かる。私はプラトニックラブの幻想と性欲を満たす為だけの幻想が分離して統合されてないのだ。私は女には清純さを求める一方で性のみを楽しみたいという欲望を持っており、愛と性が一致してないのだ。日本にはプラトニックラブの幻想はなくヨーロッパ人みたいに性的な葛藤はなかった。日本人は性におおらかで夜這いや筆下ろしの風習があり、性を気軽に楽しんでた。そんな日本人を見てヨーロッパ人は驚いた。近年になりヨーロッパからプラトニックラブの幻想が輸入され、日本人もヨーロッパ人と同じく葛藤を抱えることになった。今の日本人はやたらと処女にこだわる人間がいるし、性自体を神聖視してる人間も多い。これはプラトニックラブの幻想が輸入された結果と言えるだろう。岸田の本を読み膝を叩きたくなった。岸田は分析力がはやりあると言えるだろう。どのような欲望にも社会性があるのだから、女を抱きまくって優越感に浸ってる奴は社会に踊らされた哀れな男と言えよう。女と全く縁のなかった私の嫉妬もあるが、欲望には社会性があると知れば、欲望を満たせなくとも、ある程度欲望と距離をとり客観的になれるだろう。

フロイトが性の解放運動に最も貢献した人物であることには論を待たない。フロイトの登場により性の解放運動が始まったのである。フロイトの弟子のライヒ神経症になるのは性的葛藤にあるのだから性を解放してやれば世界は平和になると考えてオルゴンエネルギーなるものがあると考えた。オルゴンエネルギーとは世界に充満し、性エネルギー、生命エネルギーと考えられ、病気の治療に有効だと考えられた。オルゴンエネルギーの力によってオルガスムスに達することが出来ると考え性の解放を訴えていた。ライヒは話にならないが、性の解放運動に一役かったフロイトのお陰で今では誰もが気軽にセックスを楽しめるようになったが、資本主義はプロテスタントの貯蓄の精神が理由で発展したと書いたが、実は資本主義の発展に最も貢献したのはフロイトではなかろうか。岸田の理論に間違いなければ資本主義の発展は性欲を満たす、その原動力にあったのであって性を解放したのはフロイトなのだから、資本主義の発展に貢献したのはフロイトと言うことになる。

とにかく、人間の精神の構造は時代や社会性に影響を受けると発見したのはフロイトでありこれは偉大な発見であった。今でも欲望には普遍性があるように勘違いしてる人間がほとんどなのに、今から100年以上前に欲望には時代性や社会性があると訴えていた人間がいたのだ。全く天才的と言わざるを得ない。養老孟司によれば個人と集団を分けて考えないのは私を含めて岸田秀の二人だけ(私を入れて三人だけ)と語っていたが、なぜ個人と集団を分けて考えるか不思議で仕方がない。今でも一般的じゃないこの考え方を100年以上前に持っており、個人と集団を分けずに考えていたフロイトは天才的だったと言う他ない。固着と言えば聞いたことがある人間もいるかと思うが、これは誰もが個人の心理機制と考えるだろうがフロイトは違う。フロイトはこの固着現象も集団心理学的に分析する。ある特定の部族が住みかを移動する時にある地点まで行き、その場にとどまってしまう人間がいたに違いないと分析するのだ。全く恐るべき分析力である。

とにかくフロイトの登場により、現代人は性を楽しむことが出来るようになったのだからフロイトに感謝すべきであろうか。(日本は昔から性に関してはおおらかだったが、プラトニックラブの幻想がヨーロッパから入ってきて日本人の性観念も変わってしまった。今でも処女幻想は根強くアイドルや女子アナに清純さを求める人間は後をたたない。最近フジテレビのお天気お姉さんが初対面の一般男性とナンパバーで10分間も熱烈なキスをしてた事実が暴露されて話題になったが、その女子アナは清純派で売っており好きなお天気お姉さん2年連続1位を獲得してて、その女子アナはファンにショックを与えたようだが、岸田が指摘するようにプラトニックラブの幻想と性欲だけを求める性幻想が分離してるのだから、このスキャンダラスな事件は何もおかしくない。彼女は清純な側面とエロス的側面の両方持っていたのであろう。従って彼女を擁護すると彼女の本当の側面が暴露されたという考えは間違いである。現代人は処女性とエロス性の両方を持ってるのであるから、彼女のように清純に見えて裏ではエロスを満足させてる人間がいても何ら不思議ではない。現代ではアイドルや女優がAVに出演することが珍しくないがそれも、プラトニックラブの幻想と性欲だけの性幻想が分離してしまったことと無関係ではないだろう。セックスを気軽に謳歌出来るようになり性の敷居が下がったのであり、性は今では娯楽であり、やましいものであるという観念がなくなり、誰もが気軽に楽しめるものとなった。そこで、自尊の幻想を満たしたい欲望ももちろんあるが、性の観念が変質し敷居が下がった為に、AVに出演する芸能人が出てくるのであろう。あの女優やアイドルがAVに!と驚く人間がいるが、驚くのはプラトニックラブの幻想を信じてるからである。もう1つは性のタブーが崩壊してしまったこととも無関係ではないだろう。性が解放されアダルトビデオが普及すると性のタブーがなくなりAV界は次々と性のタブー破っていく。従って遂には性のタブーがなくなり、究極のタブーとも言える有名人に目を向けたのであろう。有名人の自尊の幻想とアダルトビデオ会社の思惑が一致しAVに出演するアイドルや女優が増えたのである。)少なくとも心理は全て社会性があるのだから女を手に入れることが出来ないからと言ってそこまで落ち込むこともあるまい。その欲望も社会の産物なのだから。そのことを知ることによって客観的になることが出来るだろう。フロイトは偉大だ。日本で一番賢い人だと言われてる内田樹が自分に確信を与えたのはフロイトマルクスですと言い、日本で1位、2位を争うほど分析力のある岸田が天才と褒め称えているのだから確かに天才的人物であろう。

最近では草食男子とか言われて女にも恋愛にも興味のない男子が増えてきたし、昔の男子ほど購買意欲もなく車も欲しがらず洋服も安物で済ませる男子が増えているようである。安倍が日本を取り戻すとかほざいてその実、外交でも大して成果を出さず、金をばら蒔き続け、そして日本国内では貧困層が増え内需が冷え込み資本主義もその限界が見えてきたと言えるだろう。従ってアメリカは別として欧州でも断捨離や要らないものは捨てて生きる質素な生活が密やかなブームになり、日本でも草食男子が増えてきたので資本主義の終わりは近いかも知れないと思いたいが相も変わらず自民党を指示するアホがいるのだから全く楽観視出来ないだろう。どうやったら自民党信仰を捨てさせることが出来るだろうか。難しい問題である。

精神分析入門は簡単な書物なのでオススメである。是非とも一読を。ついでに岸田の書物も一読を。